コインランドリー経営とは?経営方法やメリット・注意点を解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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コインランドリー経営とは?

コインランドリーの店舗数は年々増加しており、現在では約2万5千店舗を超えていると言われています。これは共働き世代の増加やコロナ禍における衛生意識の高まりから需要が高まったことに加え、コインランドリーは簡単に始めることが出来て儲かると話題になったことで新しくビジネスとして始める事業者や個人が増えたからだと言えます。
しかしながらコインランドリー経営は決して簡単なことではなく、正しい知識を身に着け戦略的に行っていかないと安定した収益を得ることは出来ません。ここではコインランドリーを経営していくにあたり、初期費用や利回り、最適な立地条件、メリットやデメリットについて解説していきます。

初期費用について

 コインランドリー経営における初期費用の相場は、約2,000万~3,000万円と言われています。主な費用としては以下の通りです。

  • 機器購入費(洗濯乾燥機、洗濯機、乾燥機、両替機など)
  • 工事費(給排水工事、電気工事、空調工事、外装工事、内装工事など)
  • 宣伝広告費(のぼり旗、チラシ、WEB広告、SNS運用など)
  • その他(消耗品、店内用備品など)

更地から始める場合は上記に加え建設費が約1,000万~2,000万円ほど必要になって来ます。こういった費用の中で最も大きい金額を占めるのは機器購入費です。機器に関しては金額の幅が大きいので、自店の経営戦略に合わせて機器を選定することが大事です。車での来店がメインの客層であれば、布団や毛布などに対応した大型容量の機器を増やすといったことや他店との差別化を図るべくシューズクリーナーやペット用品専用機器を採用するといったことが考えられます。

最近ではリアルタイムで機器の稼働状況がわかるアプリやキャッシュレス対応機器なども徐々に流行の兆しを見せています。そういった機器を中心に揃えていくとどうしても初期費用としては高くつきます。逆に容量が小さめの機器を選定することや中古機器を採用することにより初期費用を抑えることも出来ます。

利回りについて

 コインランドリーの利回りは約10%~20%と言われており、賃貸の場合だと約10%~15%ですが、自己所有物件であれば約20%に近い利回りが期待出来ます。ただこれはあくまでも平均的な数字で実際は経営が上手くいっていない店舗も非常に多いのが現状です。 年間の売上規模で見てみると地方では400万円以下の店舗も散見され、借地料が高い都市部でも500万円にも満たず苦戦している店舗も多く存在しますので、安定して利益を出すためには戦略を十分に練ることが重要です。

コインランドリーの経営方法

コインランドリーの経営方法としては、自分で開業する方法のほかにもFCへの加盟や業者に土地を貸すなど幾つか方法がありますので順に紹介していきます。

向いている土地

 コインランドリーの店舗はあまりスペースをとらないことが魅力です。住宅や他の業種に向かない狭い土地でもコインランドリーとして出店出来る場合があります。ただし立地条件が売上に大きく影響する業種ですので、出店場所が適切かを事前によく調査する必要があります。以下は出店に向いている土地の一例ですので参考にしてみてください。

アパートマンションなど近隣住民が多い

アパートやマンションが多い土地だと共働き世帯や単身世帯からの需要が見込めます。住人が多いタワーマンションの近隣も向いていると言えます。

駐車場がある

特に地方では自家用車の所有率が都市部に比べて高く、車でアクセスしやすいよう駐車場を確保しておくことが大事です。車での来店では布団や毛布などの大物衣類の需要も多いため、大容量の機器を採用することで客単価の向上が見込めて利益の確保にも繋がります。

商業施設が近隣にある

コインランドリーの利用は圧倒的に女性が多く、商業施設が近隣にあると買い物のついでにコインランドリーに寄るといったことでの流入が期待出来ます。ショッピングセンターやスーパーの敷地内だとさらに集客が期待出来ますので、良い条件での空き店舗があれば出店を検討してみても良いかも知れません。

またこの他にも小学校や中学校など学校の近くや広い道路に面した土地も向いています。コインランドリーの客層はファミリー層がメインのため、住宅が近くに密集している場所を選ぶのが基本です。ただし高さ制限や外壁制限のある第一種低層住居専用地域では、コインランドリーの開業は出来ませんのでご注意ください。

自分で開業

 次に出店方式について触れていきます。まずは自分で開業するといった形ですが、自己所有地がコインランドリーに適している場合や経営ノウハウを持っている場合などにオススメの方法で縛りのない自由度の高い経営を行うことが出来ます。他店との差別化を図るため自店特有のキャンペーンを実施する、定期的にチラシを打ち出すといったことも自由に行うことが出来ます。自分のアイデア次第で売上を伸ばしていくことが出来るのは大きな魅力と言えます。

しかしコインランドリーの経営ノウハウがなく手探りで収益を確保していくような状況であれば、店舗運営から宣伝広告や収支管理まで自分で行う仕事が多く難航することが予想されます。また初期投資においても大半を自己負担しなければいけないこともあり、経営が上手くいかなかった時のリスクは他の方法と比べて高くなります。

FCへの加盟

 フランチャイズ方式(FC)では、コインランドリーチェーンに加盟し経営していきます。自分で開業する場合とは異なり、既に蓄積された経営ノウハウを学びつつ店舗経営を行うことが出来ます。新規出店時には既に知名度のある名前を使用出来ますので、初めから一定の広告宣伝効果が見込めるでしょう。さらに経営の中で何か困ったことやトラブルが発生した時も手厚いサポートを受けることが可能です。

ただしフランチャイズ方式では、ロイヤリティとして売上の一部を加盟しているコインランドリーチェーンの本部に収めないといけません。また初期費用として加盟料や保証金を準備しないといけないケースも多く、営業手法や営業時間、店舗内のルールなども本部の意向に従う必要があります。そういったことから店舗としてオリジナリティを演出することは難しく様々な制限があることが特徴です。

業者に土地を貸す

 大手コインランドリーのチェーン店に土地を貸し出し、借地料として安定的に収益を得る方法もあります。この方法だと機器購入費や工事費もかからず、ノーリスクで土地活用が可能です。しかし大手コインランドリーチェーンは出店条件を非常に厳しく設定しているため、コインランドリーの出店に適していないと判断された場合は、残念ながらその土地が借りられることはありません。

また逆に出店条件を満たして繁盛した場合でも、借地料として一定金額しか収益を得ることは出来ません。ノーリスクですがローリターンになりやすい方法と言えます。

コインランドリー経営のメリット・デメリット

 コインランドリー経営のメリットとデメリットについても解説していきます。メリットとしては以下のようなことが挙げられます。

<メリット>

  • 人件費がかからない
  • 節税効果がある
  • ランニングコストが安い
  • 景気の影響を受けにくい

 コインランドリーはほとんどの場合、無人店舗となっていますので人件費がかからないというのがメリットです。定期的な掃除や集金、巡回などは必要ですが、他の業種とは違い常に店舗で誰かが待機しておく必要はありません。複数の店舗を経営する場合は従業員を確保した方が良いかも知れませんが、1店舗だけだと基本的にはオーナーやその家族が対応することで他に人件費がかかることはありません。

 相続出来る土地がある場合はコインランドリーとして土地を有効活用することで、小規模宅地などの特例が適用され相続税を減額させることが出来ます。400㎡までの相続に限りますが、最大で80%の相続税の減額を受けることが可能です。さらに機器をはじめとする設備に関しては、中小企業経営強化税制による即時償却や生産性向上特別措置法に基づく税制制度による税金の免除が適用されることがあり、より高い節税効果が期待出来ます。

 ランニングコストとして人件費と水道光熱費以外の経費がほとんどかからないのも魅力です。店舗経営における消耗品は洗剤や柔軟剤がメインとなり、その他の店舗備品などにおいて定期的に購入が必要な物品は基本的にはなく在庫を抱える必要もありません。しかし両替機の詰まりや洗濯機や乾燥機の故障などはどうしても発生してしまいます。そういった際に自分で直せないと業者を呼ぶことになり修繕費がかかってしまうことはあります。

 景気に左右されず安定して収益を得ることが出来るのもコインランドリー経営のメリットです。市場としても共働き世帯や核家族の増加により、さらに拡大する見込みとなっています。

<デメリット>

  • 初期費用が高い
  • 同業他社との差別化が難しい
  • 犯罪リスクが高い
  • 他業種への転用や店舗の移転が難しい

 コインランドリー経営のデメリットとしては、やはり初期費用が高いことが挙げられます。機器購入費もそうですが更地から建設するとなると建設費もかかってしまいます。コインランドリーとしてすぐに出店出来る空き店舗も少なく、外装や内装工事の費用がかかることはほぼ確実です。FCへの加盟という形で出店する際も加盟料や保証金などが必要になりますので、初期費用は十分に準備しておいた方が良いでしょう。

 同業他社との差別化が難しいこともデメリットです。コインランドリーは利用料金の相場がある程度決まっていますので価格戦略がやり辛く、仕上がりに関しても他店と差をつけにくい業界です。他店との差別化を図るためには、店内環境の整備や防犯面の強化をして安心で居心地の良い空間を提供することやSNSなどを活用し効果的な広告宣伝活動を行うことが大事です。来店特典やキャッシュレス決済の導入、Wi-Fi環境を整えるといったことも他店との差別化に繋がります。

 無人店舗では窃盗などの犯罪行為が多いこともデメリットです。両替機の金銭から利用者の衣類、店内備品まで盗難が後を絶たない店舗もあります。機器を破壊されると修理費もかかりますし、営業再開まで時間を要してしまいます。また24時間営業の店舗で夜間に不審者が居座るといったケースも度々見受けられます。こういった様々な犯罪リスクの対策を講じる必要があります。

 コインランドリーの店舗構造は特殊のため、他業種への転用は困難なこともデメリットです。店舗は最小限のスペースしか確保していない場合が多く、新しい業種で商売を始めた場合に狭く感じることも少なくありません。また設備をそのまま流用して移転することも困難です。コインランドリーは店舗毎に決められたスペースに収まるよう機器設置をしている場合が多く、そのまま移転先で流用しても機器の過不足が生じてしまいます。よって一度決めた場所で安定して収益を確保出来るかを、事前にしっかりと検証しておくことが大事です。

コインランドリー経営の注意点

土地があるだけでは収益化は難しい

 コインランドリーに向いている土地があることは、コインランドリー経営において最重要ですが、それだけでは安定した収益を得ることは難しいのが現状です。安定的に経営を行っていくためには多くの利用客を確保しておくことが必要不可欠です。コインランドリーの利用客は近隣住民のため、リピーターの獲得をいかに戦略的に行っていくかが重要です。
店内を明るく清潔に保つことは勿論ですが、適切な温度管理を行い雑誌やドリンクの自動販売機を設置するなど快適な空間にすることが大事です。またコインランドリー利用客の多くは女性なので、特に無人店舗の場合は監視カメラの増設やスタッフによる巡回を増やすといった防犯面も強化しておくことも重要です。

市場調査が重要

 出店前には競合他社の市場調査も重要です。近隣エリアにコインランドリーは何店舗あるのか、来店者はどの程度なのか、どういった設備で営業しているのか、利用料金の設定はいくらなのかといったことをしっかりと調査しておく必要があります。コインランドリーの商圏は車やバイクでの来店の場合で半径2~5km以内、徒歩や自転車であれば半径500m以内と言われています。同じエリア内にて競合が複数店舗存在する場合は、集客面に影響が出る可能性が高いため注意が必要です。

また出店後に関しても他店のキャンペーン実施状況などの動向を探り、どのような戦略で経営しているのかといった現状を常に掴んでおいて成功事例は自店でも取り入れるなど柔軟に対応していくことが大事です。

まとめ

 コインランドリー経営は立地条件が適していれば土地活用として節税面からも非常に有効ですが、正しい知識や経営ノウハウを持ち合わせていないと安定的な収益を確保することは難しいと言えます。また初期費用も決して安くはありませんので、慎重に計画を練っていくことが大事です。

しかし一度軌道に乗せることさえ出来れば管理が非常に楽なビジネスだと言われており、景気にも左右されることなく継続的に利益を生み出してくれます。またコインランドリー市場としては未だ衰えることを知らず、今後も拡大していくことが予想されます。需要は引き続き期待出来る業態ですので、メリットとデメリットをよく比較して新規参入を決めてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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