トランクルーム経営とは?メリットや初期費用・注意点などを解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

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トランクルーム経営とは

トランクルーム経営とは、主に土地上にコンテナを起きコンテナのスペースを第三者に貸すことにより、賃貸収入を得る賃貸経営のことを言います。

トランクルーム経営は土地上にコンテナを置くだけではなく、ビルやマンションなどを一括で借り、各部屋をトランクルームと見立て1室1室を貸す方法も取られています。

トランクルーム経営を行うためには、トランクルーム経営をするための初期費用、トランクルームで得られる賃料のこと、トランクルームには借地借家法が適用されないことを知っておく必要があります。

初期費用について

トランクルーム経営を始めるときには、初期費用を用意しなければなりません。

トランクルームの初期費用は、コンテナを置くタイプと建物の1室を貸す場合で異なります。
ここからは、コンテナタイプのトランクルームと建物内にあるトランクルームとに分けて解説していきます。

コンテナタイプの初期費用

コンテナタイプのトランクルーム初期費用は、300万円~500万円と言われています。
なお、この初期費用については土地の購入費用は含まれていません。

コンテナ自体を購入するのは100万円前後で購入することができますが、コンテナは土地上にただ置くだけにすることはできず、基礎を設置して土地に固定しなければなりません。
そのため、土地でトランクルーム経営を行おうとすると、コンテナの購入費に加えて工事費を負担する必要があります。

工事費用については設置するトランクルームの数が多くなれば多くなるほど、コンテナ1基あたりの工事費用は抑えられるようになっていきます。
設置するコンテナがあまり変わらない場合は、工事する人の人件費や使用する工事車両の数など変動しないためです。

建物内の部屋をトランクルームにするための初期費用

建物内の部屋をトランクルームするための初期費用は、リフォーム工事代金分です。
部屋をトランクルームにするためには、室内に間仕切りを設置するリフォーム工事を行います。
間仕切りを設置する工事は、1か所5万円前後と言われていますが、間仕切りの大きさや数により金額は変動します。

また、建物を借りる場合は室内をリフォームすることを禁止する賃貸契約や、倉庫として貸してはいけないという賃貸契約も存在するため、建物を借りる場合には注意ください。

賃料について

トランクルームの賃料相場は、1室あたり4,000円と言われています。

コンテナ1基を6室に分けることが多く、コンテナ1基あたり4,000円 × 6部屋 = 24,000円が基本と考えます。
それでは初期投資を何年で回収できるのか見ていきましょう。

【シミュレーション例】初期投資300万円、月額賃料が24,000円、トランクルームの空が出ない場合

①初期投資300万円
②24,000 × 12 = 28万8,000円(③年間賃料)
③28万8,000円 ÷ ①300万円 × 100 = 9.6%(④利回り)

つまり、このケースでは約10年で初期投資を回収することができるということになります。
もちろん、常に満室で10年経過することもありませんので参考としてください。

借地借家法が適用されないので注意

トランクルーム経営をするときには、借地借家法が適用されないことを知っておかなければなりません。
トランクルーム経営には「一括借り上げ方式」と「管理委託方式」の2種類ありますが、どちらの方式についても借地借家法は適用されません。
この方式の内容については、事項で解説します。

なお、借地借家法が適用されないと賃貸契約を地主や建物所有者から解約されやすくなってしまうため、トランクルーム経営者にとって経営リスクになってしまいます。

トランクルームの経営方法

トランクルームを経営には、「一括借り上げ方式」と「管理委託方式」の2種類あります。

一括借り上げ方式とは、いわゆるサブリース契約で土地だけをトランクルーム事業者に貸し、トランクルーム事業者がコンテナを設置して賃料を土地の賃借人に渡す方式です。

►サブリース契約とは、事業者の賃貸収入の増減に関わらず、一定の賃料を受け取ることができます。
そのため、一括借り上げ方式を選択すると、安定的に収入が入ります。
反面、賃料は管理委託方式より低いため、大きな利益を生むことが難しくなります。

管理委託方式とは、トランクルーム事業を自分で行い、トランクルームを借りる人と直接契約などをしてトランクルームの管理だけを事業者に任せる方式です。
事業者には管理しか任せないため支払う費用が抑えられ、直接借主と契約するため一括借り上げ方式より収入が大きくなります。
反面、借主との契約を行うには知識が必要でトラブルも発生し手間がかかります。
サブリース契約と違い借主の入退去により賃料が増減するため、収入が安定しないことがあります。

また、トランクルーム経営をするにあたりトランクルームに向いている土地なのかどうかなども知っておく必要があります。
経営方法に引き続き、トランクルームに向いている土地はどのような土地なのか、土地上でトランクルーム経営をするにあたり注意しなければならないことを紹介します。

向いている土地

トランクルーム経営をするのに向いている土地は、マンションやオフィスビルが近隣にある土地です。

近隣にマンションやオフィスビルが多いと、荷物保管の需要が高くなるためです。
やはり借り手が多い場所に設置することにより、トランクルーム経営がより安定します。

特に市街地の土地が余っていない場所にトランクルームが設置できるとなお良いでしょう。
近隣に倉庫などのトランクルームの競合がなく、借り手も多くいる可能性が高くなります。
トランクルームはアパートが建築できないような小さな土地でも経営できるため、市街地の小さな土地でも有効利用することが可能です。

トランクルームが建てられない土地もあるので注意

トランクルーム経営するにあたって、トランクルームが建てられない土地があることには注意しなければなりません。

都市計画法によりトランクルームを建築できる地域と、建築できない地域(用途地域と言います)が決められています。
トランクルーム経営は都市計画法上の倉庫業を営まない倉庫に該当し、次の表の地域によりトランクルーム経営ができるかどうかが決まります。

用途地域 倉庫業を営まない倉庫が建築できるかどうか
第一種低層住居専用地域 ×
第二種低層住居専用地域 ×
第一種中高層住居専用地域 ×
第二種中高層住居専用地域 倉庫が2階以下かつ床面積1,500㎡以下なら建築可
第一住居地域 倉庫の床面積3,000㎡以下なら建築可
田園住居地域 農産物などを貯蔵する倉庫なら建築可
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域

また、表にある地域を確認するときには、トランクルーム経営をする土地を管轄する市区町村のホームページや市区町村の窓口で確認することができます。

なお、トランクルームを建てるためには、建築基準法で定める建築確認を受けて検査に合格する必要があります。
そして、建築確認をするときには、トランクルームを建築してはいけない地域にトランクルームを設置していないか確認されてしまいます。

トランクルーム経営のメリット・デメリット

トランクルーム経営をするときには、経営方法のほかにトランクルーム経営するメリットやデメリットを把握しておかなければなりません。
ここからは、トランクルーム経営するメリットとデメリットを紹介していきます。

トランクルーム経営をするメリットは次のとおりです。

<メリット>

  • 人件費がかからない
  • アパートなど居住に向いていない土地でもできる
  • 修繕費が比較的低コスト

この項目ごとに解説していきます。

人件費がかからない

トランクルーム経営は土地の清掃などの管理をする必要がなく、人件費がかかりません。

アパートやマンション経営だと、清掃や巡回など人が行わないといけないことが多くあるため、管理人や管理会社に委託する必要があります。

アパートなど居住に向いていない土地でもできる

トランクルーム経営する土地は、アパートやマンションなどに向いていない立地の土地でも経営することができます。

トランクルーム経営は鉄道駅から近いとか、生活利便施設が近くにあるとかで経営が左右されません。
駅から遠くてもトランクルーム経営が成り立つことも多くあります。
そのため、場合によってはトランクルーム経営する土地を安く購入できたり、安く借りることができたりすることがあります。

場合によっては、幹線道路沿いや商業集積地など住居として人気がない場所のほうが、トランクルーム経営に向いているケースがあります。

修繕費が比較的低コスト

トランクルーム経営は住居系賃貸経営などに比べ、比較的修繕費が低コストで済みます。

住居系賃貸経営をしている場合、入居者が退去してしまった後にクロスの張替など修繕を行って再度貸し出す必要があります。
その他にも、経営が長期になってくると室内の設備を取り替える必要などが出てしまい、修繕費がかなりの金額になってしまいます。

しかし、トランクルーム経営にはこのような修繕がなく、住居系賃貸経営より修繕費がかかりません。

トランクルーム経営をするデメリットは次のとおりです。

<デメリット>

  • 収益性が高くない
  • 集客性が低い
  • 節税効果が低い

この項目ごとに解説していきます。

収益性が高くない

トランクルーム経営は、住居系賃貸経営より収益性が低くなります。

トランクルームは土地に並べることができる個数が限られるため、収益が頭打ちになります。
しかし、住居系賃貸経営の場合、地域によっては高層マンションを建築することができ、部屋を並べるだけではなく上に積むことができます。
そのため、並べるしかないトランクルーム経営より、上にも積むことができる住居系賃貸経営の方が収益性が高くなってしまいます。

集客性が低い

トランクルームは住居系賃貸物件よりも集客性が低くなります。

人が生活するためには住むための場所が必ず必要になります。
しかし、トランクルームは生活に必ず必要になるわけではありません。
そのため、トランクルームが乱立している場所でトランクルーム経営をするには、すでにトランクルームがある場所よりも良い立地で経営する必要があります。

良い立地で経営をするということは土地の購入金額や賃料が高くなって経営を圧迫します。
集客性が低いのにも関わらず、賃料などが高くなると経営はかなり厳しくなってしまいます。

節税効果が低い

トランクルーム経営は住宅系賃貸経営より節税効果が低くなります。

節税効果が低い理由は、固定資産税と相続税の減税措置が受けられないためです。
まず、固定資産税ですが、固定資産税は土地上に住宅がある場合は減税措置を受けることができます。
この減税措置を受けると固定資産税の計算の基となる固定資産税評価額が最大6分の1になります。
しかし、トランクルーム経営ではこの減税措置を受けることができません。

トランクルーム経営をすると、相続税の小規模宅地等の特例が利用できません。
小規模宅地等の特例とは、一定条件を満たすことにより相続税計算の基となる評価額が50%~80%減になる減税措置です。
通常、貸し付け地であれば小規模宅地等の特例が利用できるはずですが、平成30年の税制改正によりトランクルーム経営では、小規模宅地等の特例を利用することができなくなってしまいました。

トランクルーム経営の注意点

トランクルーム経営をするときには注意しなければならないことが2つあります。
ここからは、トランクルーム経営をするときに注意しなければいけないことを紹介します。

固定資産税があがるケースがある

前述のとおり、土地上に住宅がある場合には固定資産税の減税を受けることができます。
そして、この減税措置は土地上にある住宅が空き家でも減税されます。
そのため、空き家を取り壊してトランクルームを建ててしまうと固定資産税が一気に上がってしまいます。

固定資産税に加え都市計画税も課税されている場合、都市計画税も固定資産税と同様に土地上の建物を解体すると税額が増えてしまいます。

中古コンテナの建築確認が通らない

昔は海洋輸送用コンテナでも土地に設置することができましたが、現在はJIS鋼材で作成されていることなど一定要件を満たした場合のみ、建築の許可が必要になっています。
そのため、海洋輸送用コンテナが設置されているトランクルームを購入してしまうと、土地上には設置することができません。

まとめ

トランクルーム経営とは、土地上に設置したコンテナのスペースを貸し出すことで賃料を得る賃貸経営です。

トランクルーム経営の特徴は、初期費用が安く、住宅需要は少ないような地域でも開始できるという賃貸経営開始の敷居が低いことです。
住宅系賃貸経営だと建物建築など投資額が多くなったり、賃貸住宅の掃除や修繕など手間のかかる管理をしなければならなかったりします。
そのため、住宅系賃貸経営はトランクルーム経営より敷居が高くなってしまいます。

トランクルーム経営は誰でも行いやすい賃貸経営ですが、トランクルームを設置できないことがあったり、節税効果が薄かったりすることには注意が必要です。

このようにトランクルーム経営には多くのメリットとともにデメリットもあります。
そのためトランクルーム経営を開始するときには、専門のトランクルーム事業者に相談した上で、経営を開始するのが良いでしょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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