税理士予備校はどこがいい?おすすめの選び方を解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

令和4年度の税制改正により、令和5年度以降の税理士試験の受験資格が大幅に緩和されることになりました。その結果、今後は受験者層が大幅に拡大されることが予想されています。

制度の変化によって受験者層が大幅に変わる中、税理士試験のための予備校選びにはどのような変化があるのでしょうか?令和5年以降の税理士試験にできるだけ早く確実に合格するためには、税理士予備校を選ぶ際にどういった点に注意すれば良いのでしょうか?

本記事では、税理士予備校の選び方や最短距離で合格するためのおすすめの勉強法などについてじっくりと解説していきます。

税理士に必要な勉強とは

税理士試験の勉強をするにあたり、はじめに試験制度について確認しておきましょう。

税理士試験の受験資格

税理士試験を受験するためには、受験資格を得るための一定の要件を満たさなければなりません。令和4年までの税理士試験には、厳格な受験資格が設けられていました。これが大幅に緩和され、令和5年度の第73回税理士試験以降は以下のように変わりました。

会計2科目の受験資格

「簿記論」「財務諸表論」の、いわゆる会計2科目に関しては、受験資格の一切が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。

税法科目の受験資格

会計2科目とはことなり、税法科目を受験するためには、受験資格として以下のどれかを満たすことが求められます。

  • 学識による受験資格
  • 資格による受験資格
  • 職歴による受験資格

<学識による受験資格>
学識による受験資格を得るためには、以下の要件のどれかを満たす必要があります。

  • 大学、短大または高等専門学校を卒業した者で、社会科学(注)を1科目以上履修した者
  • 大学3年次以上で、社会科学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
  • 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学を1科目以上履修した者
  • 司法試験合格者
  • 公認会計士試験の短答式試験に合格した者

(注)社会科学とは、法律学や経済学に加え、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学などを指します。

<資格による受験資格>
資格による受験資格を得るためには、以下の要件のどれかを満たす必要があります。

  • 日商簿記検定1級合格者
  • 全経簿記検定上級合格者

<職歴による受験資格>
職歴による受験資格を得るためには、以下の要件のどれかを満す必要があります。

  • 法人または事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
  • 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者

合格に必要な科目について

税理士試験に合格するためには、全11科目中5科目に合格しなければなりません。具体的には、以下の必須科目や必須選択科目、選択科目の中から5科目を選択し、合格する必要があります。

  • 必須科目・・・簿記論、財務諸表論
  • 選択必須科目・・・所得税法または法人税法のいずれか1科目(両方でも可)
  • 選択科目・・・相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税

たとえば、必須科目として簿記論・財務諸表論、選択必須科目として法人税法、選択科目として相続税法、消費税法の合計5科目にすべて合格すると、税理士試験に合格となります。

なお、税理士試験は科目合格制をとっているため、一度に5科目を受験する必要はありません。そのため、自分のペースに合わせて1科目ずつ受験してもよいことになっています。

予備校の選び方とおすすめ予備校


税理士試験のための勉強には、市販の参考書や過去問などを使って独学で行う方法もありますが、合格をできるだけ早く確実なものにするためには、やはり圧倒的に情報量が豊富な予備校を活用した勉強をおすすめします。

ただし、その際の予備校の選び方は、受験生一人一人の状況によって、以下のようにそれぞれことなります。

  • しっかり時間とお金をかけて合格したい場合
  • なるべく費用を抑えたい場合
  • あまり時間が確保できない場合
  • 時間も費用も余裕がない場合

しっかり時間とお金をかけて合格したい場合

予備校に通うだけの経済的余裕もあり、受験勉強に割く時間も十分にある方には、「資格の大原」や「TAC」のような通学型の大手予備校がおすすめです。

通学型の大手予備校であれば、疑問に思ったことをいつでも講師に質問することができますし、受験仲間を作ることもできます。また、テキストの内容も充実しており、講師の質も非常に高いので安心です。

あらゆる問題に対応できるカリキュラムとなっているため、他と比べると網羅的でボリュームも多めですが、受験勉強に多くの時間を割くことができる受験生であれば特に問題ないでしょう。

なるべく費用を抑えたい場合

予備校に支払う費用をなるべく抑えたい方におすすめなのが、「LEC」のような通信型の老舗予備校です。上述の大原やTACと並ぶ歴史ある税理士予備校ではありますが、校舎は全国に2校のみで、授業は通信制を基本としています。また、割引制度も充実しているため、大原やTACと比べると費用を安く抑えることができます。

テキストの内容やボリュームについては上記2校と比べても遜色のないものですから、時間はかけられるが費用は抑えたい方にはピッタリの予備校と言えるでしょう。

あまり時間が確保できない場合

仕事の関係などであまり時間が確保できない場合は、論点を思い切って絞り込み、試験に出やすい分野を集中的に行う戦略をとらなければなりません。そのような方にピッタリなのが、「クレアール」です。

クレアールは、「非常識合格法」をキャッチフレーズに短期合格を目指している税理士予備校です。そのカリキュラムはかなり独特で、学習範囲を極限まで絞り込むことで最小限の勉強時間での合格を目指しています。

全11科目のすべてを網羅していない点はデメリットですが、その点が特に問題ない方であればピッタリの予備校であると言えます。

また、早期割引制度も充実しているため、費用をある程度抑えることも可能です。

時間も費用も余裕がない場合

最後に、試験勉強にあてる時間も税理士予備校に支払う費用にも余裕がない方におすすめなのが、完全オンライン完結型の税理士予備校です。たとえば業界最安値の「スタディング」であれば、会計2科目のコースに関しては、大原やTACの6分の1以下の金額で受講することができます。

また、講義はすべてWeb上にアーカイブされているため、スマホを使って往復の通勤時間やランチ時などのスキマ時間を受験勉強にあてることもできます。

おすすめ勉強法


最後に、おすすめの勉強法について解説します。

どの科目から受験するべきか

税理士試験の場合、まず会計2科目から勉強をスタートするのが一般的です。上述のように令和5年度からは会計科目の受験資格がなくなったため、誰でも受験をすることができます。どのみち必須科目ですから、早い段階でクリアを狙うのが王道と言えるでしょう。

ただし、勉強時間を確保するのが難しい場合や試験に対して不安を感じる場合は、とりあえずまず簿記論か財務諸表論のどちらか1科目だけの合格を目指すことをおすすめします。1科目だけでも会計科目を合格しておけば、会計科目に関しては、最終手段として大学院修了によって残り1科目の免除を受けることも可能になります。

また、会計科目でなく税法のボリュームの少ないものから手を付ける方法もあります。簿記論や財務諸表論を合格するための平均勉強時間は一般的に約450~500時間と言われていますが、これに対し酒税や固定資産税などは150~200時間程度とかなり少なめです。

とりあえずボリュームの少ない税法を1科目だけでも合格し、合格までのモチベーションを維持しながら勉強を続けるという戦略もおすすめです。

勉強をはじめるタイミング

税理士試験は毎年8月に行われます。税理士予備校のカリキュラムの大半は、試験翌月の9月からスタートします。ですから税理士試験のための勉強を始めるタイミングは、9月が良いでしょう。

最も大切なのはモチベーションの維持

税理士試験に合格するために最も大切なのは、「何としても税理士になりたい!」と思うモチベーションの維持です。

計画通り勉強を進め、1科目も不合格にならず2年から3年で全科目を合格するような人はほとんどいません。合格者ですら、少なくとも何度か不合格を経験しています。

「どれだけ勉強しても一生合格できないんじゃないだろうか?」と不安を抱えながら、それでも勉強を続けるためには、モチベーションの維持は不可欠です。そのためには、税理士法人で働きながら勉強するのも一つの方法です。

試験に合格して税理士となった先輩税理士や、同じように税理士を目指して勉強をしている仲間たちと共に働けば、合格後の税理士像をイメージしやすいですし、試験合格のためのモチベーションの維持にも役立ちます。

まとめ

令和5年度から税理士試験の受験資格が大幅に緩和され、会計科目に関しては誰でも税理士試験を受験できるようになりました。今後は受験者層が大きく変わることが予想されるため、予備校選びが今まで以上に大切となります。

また、モチベーションについては、受験環境が大きく影響します。現在就職や転職を考えている方は、税理士法人で働くことを考えてみると良いでしょう。

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監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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