不動産税務とは?不動産に関わる税金の種類と基礎知識

この記事の執筆者 税理士 鈴木 雅人

不動産オーナー様や不動産会社様の、「不動産と相続」の問題解決のサポートに努めております。法人の会計・税務や個人の不動産所得等の確定申告、売却時の譲渡税申告、相続税申告、贈与税申告など多数の申告・相談業務を行っております。

税理士の見解

「不動産に関する税金のポイント」

鈴木 雅人

  • 不動産の税金は①取得する時、②保有している時、③売却する時のタイミング別に整理すると分かりやすい。
  • 税金には、国が課税する国税と、地方自治体が課税する地方税がある。
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みなさん、こんにちは。
マルイシ税理士法人の税理士の鈴木です。

突然ですが、「不動産税務」という言葉をご存知でしょうか。

私たちマルイシ税理士法人が行っている「不動産と相続」に関する税金は、一般に「資産税」と呼ばれ、税理士業界の中でも専門性が高いとされています。

その中でも特に不動産に関する「不動産税務」については、税理士試験の受験科目にもありませんし、実務経験を積むことのできる案件も限られています。

そのため、不動産税務の知識と経験を習得し、多くの実績がある税理士は非常に少ないと言わざるをえません。

今回は、そのような業界でも数少ない不動産税務に精通した税理士が、個人の不動産に関する税金をまとめました。
この記事を読んでいただければ、10分で不動産の税金についてご理解いただけると思います。

(注)この記事では、個人の不動産に関する税金を前提としています。

【早見表】不動産に関わる税金の一覧

不動産を取得するときに関係する税金

印紙税(国税)

印紙税とは、一定の書面を作ったときに課税される税金です。
購入時の売買契約書など一定の文書の作成者には、印紙税が課税されます。
印紙税の納付は、税額分の収入印紙を文書に直接貼り付け、収入印紙と文書をまたぐよう消印をすれば完了します。税務署などに出向く必要はありません。

不動産の取引では、不動産の売買契約書や建物の建築契約書、賃貸借契約書、住宅ローンなどの借入のための金銭消費貸借契約書等が課税の対象となる文書(課税文書)に該当します。
税額は、売買契約書等の書面に記載された金額によって決定します。
収入印紙の消印についても、作成者やその代理人・従業員などのうち、誰か1名の押印か署名で行えばそれで足りますので、不動産業者との契約であれば、購入者が消印をする機会がない場合も多いです。

登録免許税(国税)

登録免許税は、自分が取得したことを示すため(登記するため)にかかる税金です。
不動産の所有を登記を申請する際に、国に納める国税です。
不動産に関する登記申請をする場合、不動産の価格、登記の種類、不動産を登記する原因(購入や贈与、相続など)によって、税額が変わります。

司法書士に登記の手続きを依頼する場合、登録免許税は司法書士が計算して立て替え払いをし、後から報酬と一緒に、司法書士に支払う流れが一般的になります。
もし、ご自身で登記の手続きをする場合は、税額を計算して税務署等で納付し、その領収書を、登記申請書に貼り付けます。
他にも、税額が3万円以下の場合に収入印紙を貼付する方法や、オンラインによる登記申請での電子納付といった納税方法もあります。

消費税(国税)

消費税は、ものやサービスの「消費」に対して一般に課税される税金です。

課税事業者が国内で行った、資産の譲渡等に対して課税されますので、例えば不動産業者から購入するような場合には、不動産業者は消費税の課税事業者であることが多く、建物購入代金に対して消費税を支払うケースがほとんどです。その他、仲介手数料等も消費税の課税対象になります。

これに対して、土地の購入代金は消費税が非課税と取り決めがあるので消費税が課税されていません。
皆さんが、不動産業者から不動産を購入したような場合に支払った消費税は、不動産業者が皆さんの代わりに国に納めているので、購入時に支払う以外に何かをすることはありません。

不動産取得税(地方税)

不動産取得税は、不動産を手に入れたときに課税される税金です。

不動産を売買や贈与で取得したときや、新築・増築したときに都道府県から課税される地方税です。

不動産取得税は、「賦課課税方式」という徴収する側(この場合、都道府県税事務所)が税額を計算して通知する税金になります。
不動産の取得から6ヶ月~1年半くらいの間にお手元に届く「納税通知書」を使用して納税を行います。

このように基本的には、都道府県税事務所が計算する税金ですが、税額を計算するには不動産の情報が必要ですので、各自治体の条例では、不動産の基本情報や取得状況などの情報のみ、取得者からの自己申告を求めていることが一般的です。

なお、「住宅」の購入については税額を軽減する特例がありますが、特例を適用するには、必要書類を用意して、都道府県が定める期限内に申告をしなければなりません。
必要書類がわからない場合などは、都道府県税事務所に早めに連絡しましょう。

また、不動産取得税は相続した不動産にはかかりませんが、相続人以外が「特定遺贈」によって取得した不動産は、不動産取得税の対象になります。

なお、「住宅」の購入については税額を軽減する特例がありますが、特例を適用するには、必要書類を用意して、都道府県が定める期限内に申告をしなければなりません。
必要書類がわからない場合などは、都道府県税事務所に早めに連絡しましょう。

また、不動産取得税は相続した不動産にはかかりませんが、相続人以外が「特定遺贈」によって取得した不動産は、不動産取得税の対象になります。

相続・包括遺贈 特定遺贈
相続税
不動産取得税 かからない

関連記事:特定遺贈と包括遺贈の違いとは?メリット・デメリットや注意点まとめ

贈与税(国税)

贈与税は財産をもらった人が納める税金です。

不動産を購入するために親から、金銭などの贈与を受ける方も多いと思いますが、贈与を受けた方は、基本的に贈与税の申告をしなければいけません。
このときに、知っておきたいのは、マイホーム関係の贈与税の特例です。

住宅取得等資金の非課税

その贈与が「直系尊属」(親や祖父母など)から、「マイホームを取得するための金銭」の贈与であれば、一定額まで、贈与税が非課税になる特例を適用できる可能性があります。

夫婦間贈与の特例

贈与税の配偶者控除の特例です。この特例を利用することで、夫婦間のマイホームやマイホーム購入資金のうち一定額までは贈与税が非課税となります。

これらの特例を適用するには要件を満たしている場合は勿論のこと、贈与税の申告を行う必要があります。申告書だけでなく、申告書に一定の書類を添えて提出する必要があるため、特例の適用要件やそれを踏まえての贈与税の申告をスムーズに行うためにも税理士に相談して進めていくのが望ましいです。

相続税(国税)

不動産(相続財産)を取得した相続人については、相続税の申告が必要になる場合があります。
相続税の申告をする場合、まずは課税対象となるすべての財産から相続税の総額を計算し、その総額を、実際に取得した各人の財産額に応じて按分することで、初めて個々人の納税額が確定します。
そのため、特定の財産のみから税額を計算することはできず、相続人が誰であるか、各人がいくら財産を取得したかといった情報が必要です。

相続税の申告で特に難しいのは、課税対象となる財産の選別とその評価にあります。
とりわけ、土地の評価は難易度が高いため、相続税に強い税理士(特に不動産の相続に強い税理士)に依頼することをおすすめします。
相続税の評価や土地に係る特例などを最大限活用せずに、相続税負担が大きくならないように税理士に相談しながら慎重に相続税申告を進めましょう。

住宅ローン控除(所得税(国税)・住民税(地方税)計算上の特例)

住宅ローン控除とは、マイホームをローンで購入した人が、一定期間中、ローン残高に一定の控除率を乗じた金額をその年の「所得税額や住民税額」から控除できるという特例です。

購入時の税制ということでは、世間一般になじみのある制度ではないでしょうか。
この特例を適用するには、まず、適用1年目に確定申告をする必要があります。

サラリーマンの方であれば、2年目以降からは、会社の年末調整でも適用できるようになります。
初回の確定申告では、住宅ローン控除を適用するための要件を満たしていることを証明するために、さまざまな書類を準備する必要があります。
必要書類は、住宅ローン控除を適用する人の状況によって異なり、とても複雑です。
要件漏れのないよう、事前に税務署に確認してからの購入が望ましいです。

不動産を保有しているときに関係する税金

固定資産税・都市計画税(地方税)

固定資産税や都市計画税は、1月1日にその不動産を持っている人に納税義務があります。
市町村(東京都23区は都税事務所)による賦課課税方式の税金ですので、基本的に申告は必要ありません。

毎年5、6月頃に、不動産の所在地を管轄する自治体から、納税の通知書が送られてきますので、これを使って納付をします。

毎年納税があるものなので、口座引き落としで納税をすることができる自治体もあります。
納税通知書と一緒に課税明細書も送られてきますが、この中に土地や建物の固定資産税評価額が記載されています。

所得税(国税)・住民税(地方税)

所得税や住民税は、個人の1月1日から12月31日の個人の所得(もうけ)に課税される税金です。
不動産賃貸を行っている場合、家賃収入などが「収入金額」となり、賃貸不動産にかかる固定資産税などが「必要経費」となります。

収入金額から必要経費を差し引いた黒字部分がいわゆる所得(不動産所得)となり、これを給与所得など他の所得と合算して所得税や住民税が課税されます。
所得税は、翌年3月15日までに申告納税(振替納税を利用される場合は別日)の必要があります(「申告納税方式」)。

それに対して、住民税は、「賦課課税方式」のため、6月頃に自治体から送られてくる納税通知書により納税を行います。
※振替納税とは、納税者自身の預貯金口座からの引き落としにより、国税を納税する方法です。

消費税(国税・地方税)

すべての場合に申告納税が必要になるわけではなく、テナントや一定の駐車場の賃貸などをしており、基本的に、2年前(基準期間)の消費税が課税される売上高(課税売上高)が1,000万円を超える場合に消費税の課税事業者となり、申告納税の義務が生じます。

翌年の3月31日までに申告納税が必要です(振替納税を利用される場合は別日)。

また、テナントなどの家賃収入の他、賃貸物件の建物対価なども課税売上高として認識されるため、売却の2年後に意識せず消費税の課税事業者になっていたというケースもありえるため注意が必要です。

補足消費税は、負担者(消費者)と納税者(課税事業者)の異なる税金です。
この仕組みを、間接税といいます。

購入時の税金の説明で出てきた消費税は、負担者(消費者)としての話でしたが、ここでは納税者としての話になっています。

個人が納税者にあたるかどうかは、原則、前々年の課税売上高から毎年判定を行います。

事業税(地方税)

事業税とは、個人事業主が商売をする上で地方自治体の公共サービスを受けていることからその一部を負担する目的で課税される地方税です。
すべての不動産オーナーに課税されるわけではなく、一定規模以上になり不動産貸付業と認められた場合に課税されるものです。

事業税は「賦課課税方式」の税金のため、地方自治体から8月頃に送られてくる納税通知書を使って、8月と11月の2回に分けて納税を行います。

不動産を売却するときに関係する税金

譲渡税(所得税(国税)、住民税(地方税))

譲渡税とは、個人が所有する不動産などを売却したときに、その売却益(譲渡所得)にかかる「所得税と住民税」の総称です。

譲渡益が発生している場合には、基本的に、所得税の確定申告が必要になります。

所得税の確定申告をしていれば、その情報は地方自治体にも共有されますので、住民税の申告は必要ありません。

所得税と住民税額は、譲渡所得(売却代金−取得費-譲渡費用)に、税率を乗じて計算しますが、売却する不動産が住宅であるなど一定の要件を満たす場合には、譲渡所得から特別控除を差し引くことができます。

譲渡所得税の申告や、特別控除の適用判断、特別控除を受けるための必要書類の準備などは、難易度も高いので税理士に依頼することをおすすめします。

消費税(国税)

すべての場合に申告納税が必要になるわけではなく、賃貸物件の建物の譲渡が消費税の課税対象となります。上述しておりますが、売却年に消費税の課税事業者になるかどうかは、2年前の課税売上高によります。
なお、土地の売却代金については非課税取引ですので、消費税はかかりません。

~マイホーム等の売却の場合~

一般消費者である個人がマイホームを売却する場合には、建物部分も含めて消費税が課税されませんが、賃貸物件を売却する場合には、建物部分の売却対価は消費税の課税対象となりますので注意が必要です。売却年が消費税の課税事業者かどうかは、基本的に2年前の消費税がかかる売上高(課税売上高)が関係するため、税理士に相談して売却時期を決定するのが望ましいです。

印紙税(国税)

不動産を売却するときに売買契約書を書面で作成すると、その文書は、印紙税の課税対象になります。そのため、記載金額に応じた収入印紙を、契約書に貼らなければなりません。

まとめ

不動産は、「取得する時」「保有している時」「売却する時」「相続や贈与をする時」に税務申告が必要になります。
このとき、「とにかく書類を出しておけばいい」という考えで、非課税の特例や控除を使わずに自分自身で申告をし、高額な税を納めてしまったという方を目にするのも少なくありません。
不動産取得税、登録免許税や印紙税は普段の生活では馴染みがなく、取引をした後に思わぬ税金がかかってしまうということもよくあります。
不動産に精通した税理士に申告の依頼の際に不動産取引にかかる税金の全体像を確認すると良いでしょう。
不動産の税務は、専門性の高さが必要とされるため不動産に強い税理士に依頼することをおすすめします。

関連記事:不動産税理士と一般的な税理士との違いや特徴・選び方を徹底解説

不動産税務についてよくある質問

最後に、よくある質問を確認します。

Q:不動産税務はどこで学べますか?

A:不動産税務は、税理士試験の受験科目にはありません。

また、座学と実務も異なるため、実際に案件に触れて身に着けるしかありませんが、実務経験を積むことも困難であるのが現状です。

マルイシのように不動産税務に特化した環境でなければ不動産税務に精通した税理士になるのは難しいと考えています。

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監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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