土地・建物の相続税評価額と計算方法とは?
税理士の見解
「土地相続のポイント」
・不動産、特に土地の評価は、相続税額へ与える影響が大きい
・賃貸不動産に空室がある場合は相続税評価は高くなるので注意
・小規模宅地等の特例の要件を満たしているかしっかり確認する必要がある
目次
みなさん、こんにちは。
マルイシ税理士法人の税理士の鈴木です。
相続で不動産(土地や建物)を取得することになり、納税額がいくらぐらいになるのか不安になられている方も多いと思います。
相続税の申告財産の中に占められている不動産の割合は4割程度もあると言われ、不動産の評価により相続税額も大きく変わってしまうのが実状です。
今回は、「不動産と相続」の専門家集団として活動してきた実績から、不動産の相続税評価額の計算方法や、相続税額の対策について分かりやすく解説していきます。
■税理士の腕により評価の分かれる相続財産
相続税を計算するためには、亡くなった方の亡くなった時点の相続財産を評価する必要があります。
財産評価をするといっても、現金や預金は残高がそのまま財産評価額となるので容易に把握できます。しかし、不動産の評価は評価する人の腕に左右される可能性が高いです。
そこで今回は、不動産(土地や建物)の評価方法について、詳しい算出手順や節税のポイントなどを解説していきます。
土地の相続税評価額を計算する方法は?調べ方も紹介
土地の相続税評価額を算出する手順
土地の相続税評価額を算出する場合、その手順は大きく分けると以下の3段階になります。
1.土地の評価方法を決定する
相続税の土地の評価方法には2種類あります。
- 路線価方式
- 倍率方式
相続された土地がどちらの評価方法で評価するのかはあらかじめ決められており、国税庁のホームページなどでそれらを確認することができます。
一般的に市街地や住宅地、もしくは郊外などの人口が多いエリアは路線価方式で算出し、人口の少ない地方や山間部、また田畑や山林などは倍率方式を用いて算出します。
2.土地の価格を算出する(地域ごとの倍率を固定資産税評価額に掛ける)
評価方法が決まったら、相続した土地の評価額を算出します。詳しい計算方法については後でご説明しますが、路線価方式はその土地が面している道路の路線価をもとに計算します。
それに対して、倍率方式は、地域ごとに倍率が決められており、その倍率を固定資産税評価額に掛けることで計算します。
3.補正をする(路線価方式のみ)
倍率地域のように山間部や山林、また人口の少ない場所であれば土地の形が多少いびつであってもその価格に与える影響はあまりありません。
しかし、住宅地の場合、土地の形が不整形である場合や道路への面し方によって、実際の売買価格は大きな影響を受けます。そのため、路線価方式で評価した土地については、それらを考慮して土地の評価額の補正を行います。
土地の評価は、このように3つの段階を経て算出していきます。それでは実際にどのように行うのかを、路線価方式と倍率方式のそれぞれに分けて確認していきましょう。
路線価方式による土地の評価
はじめに国税庁のホームページなどにアクセスし、該当する土地の地番などから路線価図を見てみると、下図のような図を見ることができます。
住宅地図と同じように道路があり、その道路に数字やアルファベットなどが書いてあります。数字は、この道路に面している土地の1平方メートルあたりの価格を千円単位で表しており、それに続くアルファベットはその土地の借地権割合を表しています。
例えば上図の赤丸で囲ってある「30E」の部分を見てみましょう。
もしこの道路に接している土地を100平方メートル相続した場合、その土地の評価額は、
・30,000円×100㎡=3,000,000円
となります。
土地の補正について
先ほどお話ししたように、土地の形が綺麗な正方形である場合と、極端な長方形である場合では実際に売買する時の価格がことなります。これを踏まえ、評価額に反映させます。
土地の減額補正にはいくつかの方法がありますが、代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- 不整形地補正・・・土地がいびつな形の場合に所定の補正率をかけて土地の評価を減額します。
- 間口狭小補正・・・間口の狭い土地の場合に所定の補正率をかけて土地の評価を減額します。
- 奥行長大補正・・・間口が狭くて奥行きのある、いわゆる「ウナギの寝床」のような土地の場合に所定の補正率をかけて土地の評価を減額します。
これ以外にも、土地の補正にはさまざまな方法があります。
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倍率方式による土地の評価
それに対して倍率方式による土地の評価は、さきほど述べたように、その土地の固定資産税評価額に所定の倍率を掛けて算出します。
路線価方式と同様に、国税庁のホームページの評価倍率表から対象となる土地の倍率を探します。
実際の倍率表は以下のようになっています。
赤丸で囲んだ土地の場合、上記住所の宅地の倍率は1.1ですから、固定資産税評価額が1,000,000円の場合であれば、その評価額は以下のように求めます。
・相続税評価額=1,000,000円×1.1=1,100,000円
家屋(建物)の相続税評価額を計算する方法
家屋(建物)は、その利用方法により評価方法がことなります。また、それに応じて敷地の評価方法も変わっていきます。この章ではまず家屋の評価方法をご説明し、次に、それに伴い変化する敷地の評価方法について解説していきます。
家屋の評価方法について
家屋の相続税評価額は、以下の計算方法により算出します。
例えば、相続した家屋の固定資産税評価額が1,000,000円であれば、その固定資産税評価額は1,000,000円×1.0=1,000,000円になります。
貸家・アパートの評価方法
同じ建物でも、貸家やアパートの場合は評価方法がことなります。家やアパートを誰かに貸すと、借りた人には借家権が生じます。
借家権とは簡単に言うと、その家に自由に住むことができる権利です。
「今すぐここから出ていけと言われても出て行かなくてもよい」のです。
この権利の分だけその建物は不自由になるため、評価額も下がるわけです。ですから貸家やアパートの場合、相続税評価額は以下のように算出します。
この借家権の価格は、以下のように算出します。
借家権割合は、全国一律で原則30%と定められています。
また、賃貸割合とは建物の入居率のことをいいます。たとえば4室のアパートで2室が入室している場合であれば、賃貸割合は50%になります。
貸家建付地の評価方法
建物を誰かに貸すと借家権が生じて建物の評価額が下がるだけでなく、建物の敷地にも借地権が発生するため、その分だけ敷地の評価額も下がります。
貸家建付地の評価をいきなり理解するのは難しいため、まず貸宅地から順を追って説明していきます。
貸宅地の評価
建物を貸せば借家権が生じてその分だけ建物の評価が減るように、土地を貸すと借主に借地権が生じるため、その分だけ土地の評価額が下がります。
土地に対する借地権の割合を借地権割合といい、これは路線価図で評価する場合であれば路線価図に、倍率表で評価する場合であれば倍率表に記載されています。
例えば、路線価地域の説明で用いた路線価図の赤丸(「30E」)に面した土地が貸宅地である場合、この貸宅地の相続税評価額は以下のように求めます。
なお、路線価図の借地権割合は以下のように定められています。
条件は先ほどと同じく土地の面積を100㎡すると、記号Eの借地権割合は50%ですから、借地権を除いた部分の貸宅地の評価額は以下の式により求めることができます。
従って、この貸地の相続税評価額は、
30,000円×100㎡×(1-0.5)=1,500,000円
となります。
貸家建付地の評価
では、この土地に家を建てて誰かに貸している場合、その敷地はどのように評価するのでしょうか?
家を建てて誰かに貸している場合、借りている相手には借地権だけでなく借家権も新たに生じます。この借家権のある貸家の敷地(これを「貸家建付地」といいます)を評価する場合、先ほどの算式の借地権割合に借家権割合をかけて相続税評価額を算出します。
借家権割合は原則として日本中どこでも30%と定められていますので、貸家建付地の相続税評価額は以下の式により求めることができます。
なお、上記の貸宅地と同じ条件の場合、この貸家建付地の相続税評価額は、
30,000円×100㎡×(1-0.5×0.3)=2,550,000円
となります。
賃貸割合のある貸家建付地の評価
では、上記の貸地の上に全4室のアパートを建て、現在2室(50%)入居している場合、相続税評価額はどうなるでしょうか?
4室中2室しか入居していないわけですから、当然賃貸割合に応じて借家率も減ります。そのため、この貸家建付地の相続税評価額は以下の式により求めることができます。
なお、上記の貸宅地と同じ条件の場合、この貸家建付地の相続税評価額は、
30,000円×100㎡×(1-0.5×0.3×0.5)=2,775,000円
となります。
条件が複雑になると計算方法も複雑になりますが、このように順を追って計算していただければご理解しやすいと思います。
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ここまでは、土地や建物など不動産の評価方法についてお話してきました。
さらに不動産については、小規模宅地等の特例といって税額を大きく下げることができる特例が存在します。
土地が多い場合は不動産評価に精通した税理士に依頼するのがおすすめ
相続財産の中に多くの土地が含まれている場合や面積の大きな土地が含まれている場合には、不動産評価に精通した税理士に依頼することをおすすめします。
土地の評価には、上述したようにさまざまな補正方法があります。土地が多い場合や面積が大きい場合、この補正が少しでも間違ってしまうと最終的な税額も大きく変わってしまいます。
また、相続税は税率も高く高額になる場合もありますが、その分だけ節税のための方法もたくさんあります。
そのため、このような場合には不動産評価など相続税に精通した税理士に依頼し、できる限りの節税をお願いする方が最終的には得をする可能性が高いでしょう。
よくある質問
Q.相続財産に不動産が多く、納税資金の確保のために不動産を売却する必要があります。いつ売却しても良いものでしょうか。
A.相続不動産の売却は慎重に行ってください。小規模宅地等の特例の対象となる要件との兼ね合いで不動産であれば売却できる期間に制限があります。
また、納税資金の確保のために急いで売却することで、安く買いたたかれてしまったり、土地を切り売りなどする場合の切り方で残された土地の価値が大きく変わってしまうことがあります。
タイミングや売り方についてはご注意ください。
まとめ
相続した土地を評価する場合、その場所や大きさだけでなく形によっても評価方法がことなり、更には利用方法によっても複雑に変化します。
相続財産に含まれる不動産は、その評価方法は大変難しいうえに複雑で、かつ最終的な評価額も高額になりがちです。しかしその分、相続税額を抑えるための特例も設けられています。
相続財産に多くの土地や面積の大きな土地が含まれている場合には、相続、特に不動産の相続に精通した税理士に依頼し、専門知識を駆使してしっかりと節税してもらえば、相続税の支払いを最低限に抑えることも十分に可能になるでしょう。
マルイシ税理士法人は、不動産オーナーの相続税申告を専門としています。相続財産に自宅やアパートなどの不動産がある場合には、迷わずご相談ください。
相続に精通した弁護士や司法書士などの他の士業や不動産コンサルタントなどと協業していますので、相続と不動産についてもワンストップで対応が可能です。
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